ロールモデルになるような、各業界の第一線で活躍している方々をインタビューと年表で紹介するこのコーナー。第12回のゲストは、ベストセラー『盲導犬クイールの一生』や、チャートを用いて構造オチの笑いに落とし込む「分類王」としての著作など、多数の本の出版を手がけられている著述家/編集者の石黒謙吾さんです。

母親が3人いたり、父親の借金で夜逃げしたり、キャンディーズの追っかけをやったり、同棲相手に家財道具一切を持ち逃げされたりなど、激動の人生を送られてきた石黒さんのこれまでの歩みについては、ぜひ年表をご覧ください。

絶対的な価値観で生きていこうと思ってます

現在のお仕事について教えてください。

人の本はなるべくおさえめにしてたんですけど、2011年は6冊ぐらい人の本をつくって、自分の著書が全然出せなかったので、やりたい企画がだいぶたまっているんですよ。もう何十もあるので、なるべく著書を生み出していきつつ、人の本もどうしてもやりたいのがちょこちょこあるので、うまくバランスをとりつつやっていこうと思っています。

昨年の秋に4冊固まったときは一切なにもできなくなっちゃって、また連載や単発記事もあるし、自分の時間が本当にないですね。1日12時間は必ず働きますけど、なかなか進まないので、捨てられることは捨てていかないと。けっこうこれでもすでに捨ててるんですけどね。飲み会やパーティーにも行かないようにしてるんだけど、それでもやりたいことがまったく進んでいかないので。かといって体もいろいろがたがきているから休みたいけど、去年は10日ぐらいしか休んでないんですよ。

自分の時間もつくりたいけど、そんなことを言っていると税金が払えないし、借金もいっぱいあるし。30万単位の借金を10人以上に借りてるんじゃないかな。もっとあるかも。借金だらけでも悔いはないですけど。早めに絵を描いてだけ暮らせる生活がしたいですね。月に3枚描いて100万ずつ売れたら300万じゃないですか。そういう生活がしたい(笑)。それは50歳になって本気で思っていることです。とにかく目先のやりたいことを消していかないとそこに行き着かないので。でも70で死ぬと仮定したらあと20年しかないから、けっこうがんばらなきゃいけないなとは思っているんですけどね。

だから本当に時間が貴重だから、いらないこと、たとえばFacebookとかはやらないようにしてます。やらないというかしんどいんですよ。僕は絶対的な満足感に向かっていて、相対的な満足感は得ないほうなので、人がこうしているとかあんまり興味はないんです。相対的に考えると不幸せになりますから、極力絶対的な価値観で生きていこうと思っているんですよ。だから偏差値とか気にしたこともないし。たまたま芸大志望で普通の大学を目指さなかったからですけど。

自分の人生を振り返ってみてどう思いますか?

けっこうネタが豊富に人生が進んでくれてるなと思いますね。僕なんかよりすごい方はいっぱいいるけど、ネタが多いという意味ではうまいこといってるなと思います。楽しいですよ。借金なんかも楽しいです。借金が苦しいという意味がよくがわからない。結局死んだら金なんかどうせ意味のないものじゃないですか。死ぬときにもっと稼いでおけばよかったというやつは人類史上一人もいないと言われてますけど、俺ももともと興味はないので。でも死んだら保険金で払えるだろうというのはあるから、保険金をオーバーするほど借金をつくっちゃいけないとは思ってますけど。

人生でイヤなことというのはほとんどないです。本当にイヤな人とつきあうのはイヤだと思うんだけど、イヤな人とはしゃべらなければいいだけだから。出版社でもたまにイヤな人がいたら、その人に企画を出さなければそれですむじゃないですか。同棲相手に家財道具全部を持っていかれたときはガーンとなったけど、あとから考えると面白いのでいいかと。子供のころに母親がいなくなったりしても、あとから考えたら、そのときの話なんてネタじゃないですか。そういう感じがあるから、今はたいがいのことはなんともないですね。まあ耐性じゃないですか、やっぱりなんでも。そういう意味では、耐性をつけてもらえたのはよかったです。

父親も人にすごい迷惑をかけたけど、基本的には楽しそうに生きてたんですよ。そういう姿はいいなと思います。人に迷惑をかけちゃいけないけど、どんなところにいても自分の楽しさは自分で決めるというのは普段から思っていることなので、早く絵を描いて生きていきたいなと思っています。別に本はイヤじゃないですけど、絵について何もしないまま30年たっちゃったので、そろそろやらないと。第二の人生ではなくて、今までが第一の人生の準備をしていたに過ぎないので。30年も準備にかかってますけど。

要はやりたいことをやる推進力です

ロールモデルにしている方はいらっしゃいますか?

いないです。そういうのはあんまりないです。個々には、この人のこういうところはかっこいいとかはあるし、尊敬する人はいますけど、目標とする人はいないですね。それは相対で考えないからです。遠藤周作さんのぐうたらなところがいいなとか、永ちゃんみたいな外向きに出すプロデュース能力がすごいなとか、うちの高校の野球部の監督みたいにめちゃくちゃ努力する部分は尊敬できるなとかいろいろありますけど、誰かをひとりみたいなことは全然ないです。この人みたいになりたいと思ったことがありませんから。

編集者や作家になりたい人にアドバイスするとしたら?

文章力なんか後だということをまず言いたい。大事なのは推進力です。物事を動かす力がない人が多すぎて、能書きは多いんだけど、動いてないじゃん、動かせてないじゃんっていう。自分で考えないですぐ人に聞く人には、考えれば動かせるんだからまず考えろって言ってますね。自分で考えて自分で動くことです。俺は本とかやり方も全然聞いたことがないし、どうやって企画を出すのか企画書も見たことがなかったし、たいしたことはやってないけど、それでもやりたいことはある程度できてると思うので。どうやって人脈を広げるかとか、そんなものは自分で考えろって言いたくなりますね。

宣伝会議の講座を年に2回、4日間ぐらいやるんですけど、同じことを言ってます。俺に聞くなって。ヒントはあげるけど、どの出版社にこの企画を持って行けばいいか、そんなのは本屋に行けばわかるだろう、そんなことを人に聞いてる時点で動かないよ、電話すりゃいいじゃんって。要はやりたいことをやる推進力ですね。
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石黒謙吾(著述家/編集者/分類王) | 年表(自分史)創造コミュニティ Histy(ヒスティ)